CONTENTS

第1回 仏教とは何か?

 「仏教」と聞くと,皆さんは何をイメージするでしょうか? 「葬式」や「法事」といった,人の死に関わる行事を思い浮かべる人が多いかもしれません. このように現代の日本では,私達の身近な場面に仏教という宗教が入り込んでいます.世界史の教科書を見ても,仏教はキリスト教・イスラム教と並んで 三大宗教の一つとされています.しかし,仏教の起源をたどってみると,「仏教=宗教」という側面はそれほど強くはないのです.それでは,仏教がいつ どこで生まれ,どのように伝えられて,我々日本人に身近な宗教として感じるられるようになったのでしょうか? この「仏教への誘い」では、その歴史を 分かりやすくひもといていきたいと思います.

*                *                *

 仏教は今から約2500年前のインドで誕生しました.キリスト教が紀元後まもなく,イスラム教が7世紀前半に誕生したとすると,仏教は三大宗教の中では最も 歴史が長いということになります.キリスト教の名前が「キリスト(神)の教え」に由来するように,仏教も「仏(ほとけ)の教え」に由来します.「ほとけ」 とは,仏教を開いたガウタマ・シッダールタのことを指します.ガウタマ・シッダールタの生い立ちなどについては,第2回以降で触れたいと思います.

 ここで,「ほとけ」とガウタマ・シッダールタがどうして同じものなのかという疑問が湧くと思います.実は,ガウタマ・シッダールタには別名が数多くあって, 「ほとけ」もその1つなのです.「ほとけ」の由来にはいくつかありますが,その中に「ブッダ(buddha=仏陀)」の音に漢字をあてたという説があります.「ブッダ」 とはガウタマ・シッダールタが悟りを得た後に名づけられた尊称であり,「目覚めた人」,すなわち「この世を貫く真理を理解した人」という意味です.英語で仏教を 表す"Buddhism"もこの「ブッダ(buddha)」から派生しており,「ブッダの教え」を意味しています.その他に,「シャカ(釈迦)」という呼び名もあります. この呼び名は,ガウタマ・シッダールタがシャカ族の出身であることに由来しています.

*                *                *

 次に「ほとけの教え」を簡単に説明しましょう.仏教では,この世は苦しみに満ちており,現実は汚れや苦悩に満ちていると見なします.この見方は,一見して 非常にネガティブに聞こえるかもしれませんが,日常を振り返ってみると,「好きな人に振り返ってもらえない」「嫌いな食べ物が入っている」といった不満を 毎日のように私たちは感じていることに気付くはずです.仏教では,このような現実を「苦しみ」ととらえ,この「苦しみ」から抜け出して穏やかな心になることを 目指していきます.

 「苦しみ」から抜け出す方法について,仏教は「正しい理解を得ること」だと説きます.つまり,最初に苦しみにあえぐ現状をありのままに「理解」してから, 次に自分が苦しんでいる原因についてはっきりと「理解」し,最後にこの苦しみを鎮めるための正しい方法を「理解」して穏やかな心を手に入れます.

*                *                *

 この一連の流れを見ると,病気の治療法によく似ていると思いませんか? 「苦しみ」という語を「病気」に置き換えてみると,それがはっきりすると思います. 自分が病気であることを知り,その原因を突き止めた上で,医者から薬を処方してもらい,医者の指示通りに薬を服用すれば病気は回復します.このように,仏教は 「正しい知」というものを非常に重んじており,「知恵の宗教」と呼ばれる由縁はここにあるといえます.

[文・近藤隼人 平成20年04月]